京都のオススメグルメを教えてください、と訊かれることが少なくありません。
私は食べることは大好きでこだわりもありますが、チェーン店行きますし、京都ならでは、というお店に特段詳しいわけではありません。あと、自分のオススメのお店は、あまり人に教えたくありません。
そこで、ふらり京都音博に訪れた方向けに、あまり観光ガイドに触れられていないであろう知られざる京都の個人的オススメグルメ情報を、少しだけ書いておこうと思います。
◼︎京都のソウルフードは「丼もの」
私はラーメン党なので、オススメのラーメン店を訊かれることが多いです。確かに学生の街京都には、ラーメン店の数が多いです。全国展開している「天下一品」をはじめ個性的なラーメン店が大小ひしめいています。
ラーメンが京都を代表する「ソウルフード」かと言いますと、そりゃそうなのかも知れませんし、いやいやおばんざいでしょ、とかうどんでしょ、とか色々仰る方がおられると思います。様々な地方から人の集まる京都にラーメン店が多いのは、東京にラーメン店が多いことと差異はないのかも知れません。
https://www.travelbook.co.jp/topic/562
関西には江戸を凌駕するような「蕎麦文化」はありません。個人的な主観ですが、蕎麦はヒガシノ食べ物、という認識でした。「松葉」のニシン蕎麦や、そばぼうろで有名な「河道屋」などの老舗はあるのですが。
日常的な蕎麦食い向けに、いわゆる蕎麦屋以外にも蕎麦を出す食堂はたくさんあります。
薄いと言われる関西だしは、うどんには向いていても蕎麦には不向きだと一般的に言われています。好みはありますが、私もそう思います。
そこで、見逃せないというか、これこそ真のソウルフードではないか、と私が信じてやまないのが「丼もの」です。
◼︎餅は餅屋、丼ものも餅屋
京都市内には「千成餅食堂」や「相生餅食堂」など、餅と名のつく食堂がチラホラ見受けられます。この類のお店は、殆どがひなびた昔ながらの大衆食堂といった店構えで、基本的に地元のおじいさんおばあさんや、タクシーの運転手なんかが主要客だと思われます。
これらのお店はいわゆるフランチャイズ、ではなく恐らく暖簾分けで広まっていったものと思われますが、特に「力餅食堂」と「千成餅食堂」は軒数が多い印象です。京都だけではなく、大阪や神戸にもあるようです。
http://yaasuz.blog.fc2.com/blog-entry-583.html
たいていのお店のメニューには、各種うどん、蕎麦、定食の他、丼ものがあります。メニューを見てみると、「親子丼」や「カツ丼」に混じって、他地域の方には馴染みのないであろう「衣笠丼」や「他人丼」、「木の葉丼」などの文字が見えます。
「衣笠丼」はきつね、つまり薄揚げを切ったものを玉子でとじたもの、他人丼は牛肉の端切れを玉子でとじたもの、木の葉丼は椎茸や三つ葉、蒲鉾などを玉子でとじたものがそれぞれご飯に乗っています。
なんだ、普通じゃん、という声も聞こえてきそうですが、ポイントはうどんや蕎麦の「出し」でヒタヒタになったご飯なんです。お店によってはヒタヒタ過ぎて、これはオジヤか雑炊か、というものもあります。
ちなみに「餅食堂」の名ですが、おはぎを置いている店舗も多いところから、元々は餅屋だったお店が、食堂を始めたのではないでしょうか。ちなみにメニューに「いなり寿司」と「助六寿司」がある確率も高いです。
今や食の「京都ブランド」は全国へ進出し、高級和食や和菓子はもちろん、ラーメンやデニッシュ、玉子サンドにいたるまで、どこにいても様々な京都の食べ物を食べることが出来ますが、これら京都独特の「丼もの」は、今のところ京都でしか味わうことができないんではないでしょうか。地味なだけに。
◼︎パン王国京都
京都はパン食文化が強く根付いています。洒落たベーカリーも数多いですし、昔ながらのパン屋も多く残っています。朝食がパン食の家庭も、他所に比べると多いのではないでしょうか。
お洒落なベーカリーやデニッシュ、生パン専門店あたりは雑誌やテレビでも話題になっていますが、京都には「志津屋」という老舗フランチャイズ店が、街の至る所にあります。最近では地下鉄の構内売店や、新幹線コンコースにも進出しています。
バケットやバタール(これはバター入りだと最近まで思っていたのですが、どうやらサイズのことらしいです)など、フランスパンが好まれる土地柄、固いパンが人気です。
中でも「カルネ」という商品は、市民誰しも一度は食べたことがあるほどの、志津屋随一の人気商品です。ウチのマネジャー久米も大好物で、京都出張の帰りに必ず大量に買って帰ります。
http://www.sizuya.co.jp/special/carnet.html
円形の固いフランスパンに薄切りロースハム、スライスオニオン、マーガリンか何かを挟んだだけのものですが、これが絶妙な食べ口で、一個100円弱ですから人気が出るのがわかります。お土産にもいいかも知れません。
◼︎酒どころ伏見は穴場
私は中学、高校と伏見まで電車通学していたので、ちょこちょこ伏見の大手筋商店街や伏見稲荷近辺で買い食いをしたりしていました。もう30年近く前の話です。それ以来、伏見を訪れることはなかなかありませんが、忘れ得ぬ食の思い出がふたつほどあります。
神戸の灘とならんで、関西が誇る酒どころ伏見には、大きな酒造メーカーや日本酒を嗜むことができるお店がいくつかあります。そして、学生の頃通った「玄屋」というラーメン店の人気メニュー「酒粕ラーメン」を忘れることができません。思い出は美化されると言いますが、長年経ってもあの味は忘れることができません。
通学路の途中、伏見稲荷から参道を通り京阪の駅に向かう角に、スズメの丸焼きたる謎の串を売っている店がありました。一本100円くらいでしたでしょうか。姿形は、まさに「スズメの丸焼き」でした。
稲作の大敵とされた雀をそのままの姿で丸焼きにし、食らうことによって豊作を祈る、という言い伝えを聞いたことがありますが、一度勇気を出して食べてみたことがあります。殆どが小骨ばかりで、タレ焼きなのでタレの味がメインで、食べるところは殆どありませんでした。
可愛い雀が丸焼きになっており、食べるところも殆どなく、人間の勝手な事情で、しかも100円弱で…と考えるとキリがありませんでしたが、それをキッカケに、生き物を食べることについて、少しだけ深く考えるようになった、とは言い過ぎですが、興味のある方は伏見稲荷の観光ついでにどうぞ。
有名観光地である京都の中で、大型ベッドタウン/下町的なポジションの伏見は、交通などは便利ですが、伏見稲荷や寺田屋以外の観光資源が乏しいと思われがちです。意外にも魅力たっぷりな伏見エリアは、京都の中でも穴場なのかもしれません。